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『ルルージュ事件』 エミール・ガボリオ 著

2009/05/23(土) 14:04:24 海外ミステリ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 
 どうしようかと思ったんですが、やっぱり世界初長編ミステリ、という意義は大きいだろうということで、メモ程度に。
 推理小説、というものの父祖はもちろんポーの『モルグ街の殺人』なんですけど、あれは現在の基準でいうなら……あの真相はちょっといただけないなあと私は思ったのですよ。探偵が事件を捜査して真相を導き、書き手(語り手)がそれを記述するという形は初めてだということには金字塔であるのは事実ですが。
 それに比べるとこの『ルルージュ事件』は、確かにはるかにミステリではありましたよ。



でも、そうは言うものの、トリックがずば抜けてすごいわけでも、アリバイ崩しが見事なわけでも、まして叙述トリックとか大どんでん返し!ということもなく。
かろうじて犯人当て、だというところかな。

これは多分、主役がはっきりしていないからではないかと思うのですよ。
次作からは、登場人物の1人の警官が主人公になるらしいのですが、この作品に関してはほとんど出番は無いし、素人探偵のタバレ老人の推理は読み終えてみれば正鵠を射ているけれどもだからと言って超人的なこともなく、反対にものすごく打算的で人間臭い。
予審判事のダビュロン氏にしても、私情に振り回されて冷静さを欠いている様子は読んでるこっちが危なっかしくてハラハラする。
ジェヴロールさんはいい仕事してるのに人間的に単純というのか底が浅いというのか。
こうなったら、次作のルコックさんが主役の話をぜひ読んでみたいのですよ。
このルコックさんは、実在の人物であるヴィドック氏をモデルに書かれたことがありありと分かるので、(『我が名はヴィドック』を数年前に読んでてよかったですよ私)、そうなら囮捜査官みたいな感じなのかなあ。

事件は冒頭でいきなり殺人現場になっていて、過去を一切伏せていた被害者の秘密を手繰っていく過程と、タバレ老人の鮮やかな推理に基づく証拠集めが面白いことは面白いんです。いくら実績があるとはいえ素人探偵の仮説に基づいて警察や判事が動くのはどうかと思うんですけどね(苦笑)

事件の発端となった、ある人物のエゴによる犯罪が、実は見かけ通りの単純なものではなく被害者も絡んで裏で色んな思惑が動いているところは、おお!と思いましたよ。うん、サプライズとまではいかなくても十分面白いなと。

でも、途中がねえ……中弛みしてしまった感じが否めない。

関わりのありそうな人物を順繰りに回想シーンに立たせて、少-しずつ被害者の秘密を読者に教えてくれるのかと思いきや、ダビュロン氏のどうにもならない恋情だったり時代遅れの侯爵夫人の話だったり、タバレ老人の根拠のイマイチ脆弱に思える推理に基づくタフな行動力だったり(いやだって、そんな描写あったっけ?とか、えーこんなんあり?と思う箇所が無きにしも非ず…)
もうちょっとスマートにできたんじゃないかと、偉そうに思ったんですよね。

ただ。
被害者の身内が出てきたあたりから俄然スピードアップしてきて急展開、やっと読んでる私のエンジンもかかってきたってわけですよ(遅い)

別に「意外な犯人」っていうほどのものじゃないです。
ていうか、こいつしかおらんやろ、と思ったその人やったし。ただし、動機は外しましたが……★で、動機になった人の屈折した愛情に苦笑い。アリかこんなん、と思う一方で、まあ分からんでもないかな、と。

ジェルディ夫人の悪化する一途の病状で、果たしてクライマックスのあんなことできるのかなあと疑問ではあるんですけど、そんなこといちいちつついてたら終わらないしね(苦笑)


世界初の長編ミステリを書こう!と最初から意図して書かれたものというよりは、それまでの人生で得た知識を総動員して書けるものを書いた、と言った方が正しいのじゃないかな、と巻末の解説を読んで思います。
むしろジャンルにとらわれず、もっと面白いものを書いてやろうとしたら、図らずもそれがミステリ仕立てになった、って感じ。

そしてそれが今日まで続くミステリの源流であることに、私は「ミステリというものは人類がフィクションを書き続けてきた歴史の中の、不可避なエポックやったんだなあ」としみじみ思いました。
ポーの『モルグ街の殺人』と、このガボリオの『ルルージュ事件』そしてコリンズの『月長石』は、音楽でいうならビートルズみたいなもんじゃない?って。
ビートルズに影響を受けた人たちが今、ありとあらゆるジャンルの音楽に枝分かれしてきたように、コナン・ドイル、クリスティ、ヴァン・ダイン、…まあ、そういう私達に馴染み深いミステリーの一大ジャンルを生み出すきっかけになった。

ミステリに馴染んでくると、余程のプロットでないと驚けないという何ともスレたミステリファンには、確かに物足りないかもしれないですが、『モルグ街』なんてもっととんでもないと思ったことを考えれば、この『ルルージュ事件』は価値のあるミステリでしょう。
2,625円という高価な本ですけど、まあ、損した気分ではないので、モトは取ったってことでしょうね(笑)


(2008.11  国書刊行会)
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