こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『マイ・ブルー・ヘブン 東京バンドワゴン』 小路幸也 著
小路幸也 > 『マイ・ブルー・ヘブン 東京バンドワゴン』 小路幸也 著

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『マイ・ブルー・ヘブン 東京バンドワゴン』 小路幸也 著

2009/04/26(日) 17:07:53 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 はあぁぁぁ…読んじゃった…もう読み終えてしまいました…もっとこの世界に浸っていたかったのに~~!
 てことで読了です。
 いくら自分でセーブしようとも、やっぱり無理でした。一気読みですよもう。
 それくらい面白いんです。この『東京バンドワゴン』シリーズって。
 一年間連載されていたから、おおかたのあらすじをご存知のかたもおられると思いますが、それでも未読のかたはここでストップしてくださいね!



ああ面白かった面白かった~~!

『青春と読書』の連載時も毎月どきどきしながら読んでは次を待ち焦がれたものでしたが、大幅な加筆、というのは謙遜でまるっきり新作を読んだような気がします。

まず、シリーズ本編では亡くなって幽霊として語り手をつとめるサチさん、の生まれがね。
華族の中の華族、子爵っていったら公爵やら侯爵から伯爵に次ぐような感じなんですが(『銀英伝』が基準の私は少なくとも)、こんなに高貴な家の1人娘とはねえ、シリーズ本編しかご存知なくて連載も読んでいないかたにはびっくりですよね☆
子爵令嬢、五条辻咲智子。
戦前の日本の超上流階級に暮らす深窓の令嬢。
普通ならなにがどうなっても、下町の古本屋の息子とのご縁なんて考えられないでしょうね(笑)
ただ、この古本屋《東京バンドワゴン》というのがこれまたすごい筋の家とくれば、多分、敗戦後食うや食わずで彷徨い歩いていたほとんどの日本人には想像すらできない世界でしょう。
(以前ご紹介した『取るに足らない事件』『続・取るに足らない事件』@早川いくを著 を読んでたから余計にそう思うのですが)
その矛盾を、小路さんはこの中にちゃんと取り込んで書かれているので、庶民感覚の八つ当たりというか持って行きようのない腹立たしさとかは、無いんですよね。上手いなあと思います。

咲智子さんが両親から《箱》を託されるシーンの緊迫感や、マリアさんの家庭環境のことから発展する時間かせぎと、サチとして実家に忍び込んで持ち出した自分の洋服の使い方、バンドを組んで演奏するシーンの音楽の楽しさと国境を越える心、他にもありますが、そういう新たなシーンがスピーディで滑らかで、ぐいぐい読まされるどころかもう止まらないんです!

それと、単行本に纏まったから思うことですが、一年間の連載、というとどうしても切れ切れな感が拭えないんですが、こうして繋がってみると緩急の付け方が素晴らしくて、すごいなと。
シリーズ本編は「春夏秋冬」で四つのパートに分かれている、言ってみれば連作短編なので、事件がおこればだだだーっと芋づる式に繋がればいいのですよ。
でもこの番外編は初めての長編。
中だるみがあってもいけないし、かといってずっと緊迫感漂うスリルとサスペンスなんて疲れるし何より堀田家には似合わない(笑)
どんなに切羽詰っていても大勢で賑やかに大きな欅の座卓を囲んで御飯を食べる。
どんなことでも話し合うけれども、そこにジョークや愛情を忘れない。
なかなか事態の核心に近付けないとじりじりしたり、時には暴漢に襲われたり、あるひとつの出来事が元で急展開を見せたり、というスピーディさと。
縁側に座って猫の背中を撫でたり蔵の中でじっくり読書したり、そして目的は別にして音楽を心から楽しいと、いつまでもこうしていたいと笑いあえる、ゆとり。
その対比が綺麗で、うっとりします。

それと、少しずつ堀田家に馴染んでいくサチさん。
お母さんが病に倒れるという思いも寄らない事態に、《動ぜずのサッちゃん》はさすがですw
もうすっかり、勘一さんのお嫁さんじゃないですか。
…でもこれも、五条辻の両親が惜しみない愛情を注いだからでしょうね。
だから、この偽装から始まる勘一さんとの結婚のいきさつは、もしかしたら咲智子さんのご両親としては複雑じゃないのかなあ、と一方で思ったりはしますね。
決して堀田家が悪いというのじゃなくて、それどころか家柄からすればこんな良縁もないでしょう。
でも、一人娘の両親なら、大切な大切な娘の夫となるべき人を、自分達で探したかったのでは、と。思ってしまうのですよ。その結果、昔なじみのよしみから勘一さんになったとしても、それはそれで全然違いますよね。
敗戦国になって財閥解体やら特権階級の廃止で華族の娘としての結婚ではなくなっても、結婚式の朝になるまでは一緒に暮らして、花嫁になる準備とかそういう親らしいことをしてあげたかったんじゃないかなあ。

個人的には、やっぱり勘一さんのお父様、草平さん!
いやんもう!
私のモロにツボをつく、理想のおかたぢゃないですかwww
いかん、この草平さんのことを書き出すとそれだけで2,000字くらい平気で書けそうです(笑)
マッチョじゃないし腕っぷしも息子の方が強いけど、その頭脳の冴えは国宝級で、表舞台に出たなら国のトップにだってなれるというとんでもないインテリwww
それだけでもう大好物だしご飯何杯でもイケそうなんですが♪
家の最終的な判断を妻に委ねるほど信頼し、またその最愛の妻が急な病で倒れると、途端にふにゃふにゃになるほど脆くなって、そのままあっさり転地療養に行ってしまうという、女性ならこれほど理想的なダンナ様はそうそういないって!
また、サチさんの身の危険をすこしでも和らげるために(本人まで欺いてるけど)、《箱》の処遇についてこんなに機転のきく人。
そしてキングズ・イングリッシュとバイオリンww
もしかしたら、咲智子さんの両親、特に父の政孝氏とケンブリッジ時代に相当親密な関係だったのかなあ、それくらい端から端まで視界の広い見識の持ち主。
どっかに落ちてないですかこういう男性。
……これ書いてて、マジでヨダレが出てきたんですが私(苦笑)。夢に出てきてくれませんか草平さんwww
その血は勘一さんにも確実に流れてるし、それが我南人さんで花開いたってことか。

マイ・ブルー・ヘブン。
紺碧の青空。
そんな綺麗な青空を見上げて、心に希望や夢や鳥のように飛び立ちたいほどの自由さを感じない人は、おそらくそうはいないでしょう。
この青空の下で、サチさんは世界一の幸せな女性になった。
だから、孫の名前は、藍子、紺、青、なんですね。
幸せになってほしい。その祈りをこめて。

単行本になってもちゃんとあった、私の大好きなすき焼きを囲むシーンでまた涙ぐみ、ラストの結婚式は涙ポロポロになり、ティッシュが手放せなかったけど、いいお話です。
まだまだいくらでも書けそうなんですが、このままだとまた3,000字を超えるので、ひとまずこの辺で。(2,900字以上書いてます…すいません)
次から次から読むものは迫ってるけど、今夜ベッドの中でもう一度読みます。
何度でも読む。読める。
それが『東京バンドワゴン』というシリーズです。


(2009.4  集英社)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。