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『密室(ひめむろ)の如き籠るもの』 三津田信三 著

2009/04/13(月) 18:53:50 三津田信三 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 三津田さんのシリーズ探偵・刀城言耶の活躍するものとしては初の中短編集です。
 短編みっつは『メフィスト』に掲載されたもの、中編のみ書き下ろし。
 ということで、この書き下ろし中編についての感想が大部分になると思いますが…。
 おそらくネタバレになると思われますので、未読のかたはこれより先にはお進みになりませんよう、お願いします。



まずタイトルですが。
【首切の如き裂くもの】
【迷家の如き動くもの】
【隙魔の如き覗くもの】
そして表題作の中編【密室の如き籠るもの】

三津田さんといえば、ホラーと本格ミステリの融合の名手として評価の高い書き手さんですが、このよっつのタイトルはどれも、ホラーというよりも不可能犯罪ですね。
同じ場所で同じような手段で殺人が続いたり、二箇所同時に見えるはずのない家が見えたり、隙間を覗くと幻視を視てしまう女性だったり、そして社会問題にまでなった“コックリさん”に関する真偽のほどだったり。
そのモチーフというのか一要素として、これらが薄気味悪く描かれてはいますが、実はちっとも怖くない。
それよりも、カーばりの不可能犯罪の方が強くて、それが本格ミステリとしての骨格の純度を高めているような気がします。

短編はまあ『メフィスト』で読んでたし、それに加筆や修正が加わったわけでもないのでアレですが(どれよ)、ひとつ感じたことを書くなら。

刀城言耶という探偵を使うこのシリーズに、短編は多分、向いてない。

怪奇や不可思議な民間伝承を蒐集することを何よりの喜びとし、事件に巻き込まれたり嫌々ながら引き受けざるをえなかったり、そういうスタンスで探偵として事件を「なんとなく」「いつのまにか」解決に導くという言耶さんに、短編という紙幅は明らかに足りない。せっかくの彼の魅力が半減しているし…。

ミステリとしても、トリックにやや無理が感じられたりするものもありましたし(どれとは言いません)、アリバイ崩しにしろなんとなくせせこましく感じてしまったんですよね。

ということで、さっさと中編の表題作に移って、早く褒めたいと思います(笑)

この【密室】を“ひめむろ”と読ませるのは三津田さんのこだわりというか美意識でしょうが、それに見合うだけの、かちんこちんの密室でしたよ!
こんな鉄板の密室は久しぶりw
エドガー・アラン・ポーから始まる密室ミステリの説明からはじめようとしたり(観客に却下されたけど/笑)、カーの密室談議やら江戸川乱歩の「類別トリック集成」やら、ミステリ読みには常識とも言えるタイトルが出てきて、ニンマリ♪

かと思えば、そうして密室殺人を類別しながら今回の事件を当てはめていきつつ、仮説を立てては崩し立てては崩しを繰り返す言耶氏に、登場人物たちと同じように苦笑いしながら、でも言耶さんらしいなあと思った。やっぱり言耶さんはこうでないとね♪

実際に事件が起こる前に、その部屋で過去に2度も同じ状況の死人が出たり、最初の視点人物である子どもの巌君を取り巻く大人達の環境の複雑さが張り巡らされていたり。
そしてキーになる問題の箱。
それは本当に死者を出す祟るものなのか、全くの迷信なのか。それとコックリさんとはどういう関係があるのか。
そうして読者を引きつけながら、とうとう出てしまった3人目の犠牲者のタイミング。
たるみがなくて、ぐいぐいと引っ張られて一気読みでしたよ。

密室の謎がどうしても打ち破れそうにない、ならば自分達が見た死者の最後の言動に何かヒントがないかと話し合うシーン。
うーん、いくつかは私にもすぐに読めたんですけどねえ(三津田さんの作品の場合、私にはそれすら滅多にないことなんですが)………結局、複合的に合わさった結果、ああいうことになってしまった、というところまでのロジックには辿り着けず。
いえ、伏線は結構あからさまだったんですよ。ああこれは★ってすぐに分かったし。

で、結局密室の謎は、先に類別していた中のひとつにかろうじて当て嵌まることが判明した時点で終わりかと思ったら。

最後の最後でこう来たか!

んーと、言い訳すると、多分そうじゃないかと思ったことは思ったんです私。
でも、何で言耶氏と依頼主がこういう取り決めをしたのか、この最後の真相部分を書簡形式にしたのは何故かということに関しては、そこまで思い至らなかった。
真犯人のため、と同時に、お家騒動から彼らを守るため、というのは、その前までの表向きの解決にかなり納得してしまったために、すっかり失念していたんです多分。

ただ、こういったうわべの解決と隠された真相という図式は、今に始まったことじゃないし、確かEQにも似たような作品があったよ。どのタイトルかは伏せますけど。

だいたい、刃物が腹に刺さっていたという時点で、おかしいんですよね。
普通は、刃物を使って殺すなら心臓とか胸を狙うし、自殺にしても自分でお腹刺したって苦しみが長引くくらい分かりそうなもんです。だから江戸時代までの武家社会には介錯人がいたんやもん。自殺だとしてもやっぱり首か胸を一突きにすると思う。

ただ、この作品はそういう常識ではなくて密室で真っ向勝負してるから、嘘ついてない真相の方もなんとなくこじつけみたいな感じもしたけど。まあだからこその密室の真相だったわけですが。

とにかく、一気読みしてしまうほどには楽しませていただきましたよ。

できれば、刀城言耶ものとしては、次は是非とも大長編でお願いします三津田さん。
また、あのぐるんと世界がひっくり返るようなカタルシスを味わわせてくださいね!


(2009.4  講談社ノベルス)
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