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『猫の手』ロジャー・スカーレット 著

2009/04/04(土) 03:14:29 海外ミステリ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 <エラリー・クイーンのライヴァルたち④>ということで、ライヴァルシリーズです。
 この帯がすごくて、「あの江戸川乱歩も愛した作家。『エンジェル家の殺人』と並ぶ傑作、ついに登場。」とありまして。
 ……『エンジェル家の殺人』も未読なんですけど…どうにかして探して読まねば。
 前の『死を招く航海』といい、このシリーズをご存知のかたの方が少ないと思うので、なるべくぼかして感想を書きたいと思います。


うーん……果たしてこれはどうだろう。
EQのライヴァル、というには、あまりにも緩すぎると思うんですけどねえ。

帯の裏表紙側の方でも「本格派ミステリの王道を行く傑作」とありまして、本格ミステリ好きにはたまらない惹句でしょう?
“ミステリー”じゃなくて“ミステリ”。本格偏愛主義者の符丁みたいなもんです。

広大な土地を所有し、莫大な財産を管理する大富豪の老人。
彼は独身で、親族は甥が5人(うち1人は妻帯者。彼女も身内として扱われる)と姪が1人。
それと、10年間同居している愛人の存在。
この老人は、甥や姪たちに自立を決して許さず自分の管理下に縛り付けています。若い彼らを気分次第で弄ぶことに快感を覚えるという、とんでもない爺さん。
なもので、この伯父を毛嫌いし憎みながらも拒絶できない彼らは、老人の死後に分け与えられるだろう財産を頼りに、息苦しい生活を余儀なくされていて。
そんななか、お約束のように起こる殺人事件。

解説を読むと、このロジャー・スカーレットという作家のクセらしいのですが(この作家名も、2人の人間の合作ペンネームだそうです)、とにかく事件が起こるまでが長い!
第一部がキャラクタたちの動機ありありの描写や事件に繋がりそうな出来事をひたすら読まされるので(150ページ弱も!)、正直しんどいです。それを楽しめるかたにはもってこいかもしれませんが、私は途中で何度投げ出そうと思ったか…。

事件が発生してからは警察の出番ですが、この刑事部長の主観と客観の入り混じった取調べの様子が第二部。50ページほど。

そして、名探偵としてボストン警察の警部であるケインが臨場となるのですが、その解決シーンである第三部も70ページくらいのもの。

警察が介入してから、あっという間に解決してしまう印象があって、ものすごく急いだ雰囲気が拭えません。
第一部二部三部と分ける必要がどこにあったのか…?

第一部はケインの友人である弁護士のアンダーウッド(わたし)がまとめた事件の概要、第二部は捜査のプロである刑事部長の取り調べメモ。
この中に手がかりは全て含まれているから犯人を当ててごらん、という作者の意図でしょうが…

あのね、ミステリってのはそういう構成なんですって!
解決シーンまでの描写の中に犯人を示すヒントがないミステリなんて、壁に投げ付けられて燃やされますよ!

で、この作品の何が感心しないかって、その最大の手がかりが、かなり後出しジャンケンに近いということなんですよね。
容疑者の1人を確実に除外できるその証拠、その言及が出てくるまでには全く触れられていないんです!
ただ、うっすらと、「こういうシーンがあったでしょ」程度で。
その証拠が唯一と言っていいほどの確実な物証なんですが、それがこんなあやふやだということは、「ミステリ読みと自負してるなら、これくらい想像できるでしょ。当たり前のことでしょ」と言わんばかり。
注意深く読んでいればひょっとして辿り着いたのかもしれませんが、それなら取り調べの最中にでも、この物証を残した●●のワンシーンでもいいから動く姿を書き添えるべきだったと思います。
そんなのどこにもなかったよ!むしろこの手がかりとされる手前あたりで、●●はどうしたんだろうと思ってたんやもん。

本格ミステリという厳密な括りにおける手がかりって、再読すればあからさまに書いてあるのに初読時には全く気が付かなかったー!というものだと思ってるので、私にはどうにもアンフェアな印象が残ってしまいました。

また、その他の証拠、手がかりと言っても、確固たるものというよりは、ケインという名探偵の超人ぶりをアピールしているような感じ。
被害者の人となり、生前のふるまいや言葉を教えてくれれば、その被害者がどうして殺されるに至る引き金を引いたのか、それが手に取るようにわかると言い放つケインさん。
なので、「被害者は(または容疑者は)こういう言動をしたに違いないから、この容疑者は除外できる」って…そんなんあり?
そして犯人は…最後の一行、パターン。EQにもありましたね。それに倣ったのかもしれませんが、その少し前から大体の見当はつくので、なんとももったいぶった書き方だなあと思ったり。ちっとも驚かない。

要は、この作品が気に食わないってことですね(苦笑)

仮にもEQのライヴァルとして紹介されるなら、無味乾燥なくらいのパズラーであり、動機や人物評は全く考慮せずにただ物的証拠やアリバイトリックのみから真実に至る1本の道を指し示す、その金科玉条を踏襲してほしいのは、私のわがままかなあ。これなら大山誠一郎氏の『アルファベット・パズラーズ』や平石貴樹先生の諸作の方がもっとEQに近いと思うんやけどあ。

もうひとつ、冒頭の邸の見取り図、必要ないと思う。


ということで、同じシリーズの、先に読んだ『死を招く航海』(@パトリック・クェンティン著)に比べたら、遠く及ばないなあ、という私にとっては残念な1冊でした。

(1931年発表 2000.11 新樹社)
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