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『死を招く航海』パトリック・クェンティン 著

2009/03/25(水) 09:32:29 パトリック・クェンティン THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 “エラリー・クイーンのライヴァルたち③”と銘打たれた本書。
 帯の惹句が「ロマンス、殺人、謎解きの船旅へようこそ!サスペンスの名手による、知られざるパズラー」ですよ!これが読まずにいられようか。
 で、感想をざっくり書くと、読みやすくてドキドキするわりに解決はそこそこ。ただ、キャラクタの造形と配置が絶妙なので、退屈とか苦痛は全く感じないです。
 これを読もうというかたはかなり珍しいとは思いますが、一応未読のかたは、これより先にはお進みになりませんよう。



“エラリー・クイーンのライヴァルたち”というだけあって、手がかりはフェアに、またその一節こそないものの「読者への挑戦」ばりの流れにもなっているしで、本格ミステリ好きには嬉しい1冊だと思います。

また、「P.クェンティンが、友人の妻が夫(当時はフィアンセ)に向けて書き綴った手紙を破棄される寸前のところで拾い上げ、人名を変え関係ない部分を削除するなどの修正を加えた上で(また著作権にも引っかからないことを明言した上で)、出版の運びになった」ことなど、いかにも“エラリー・クイーンという人物とJ.J.マックという著作者”を意識した作りになっています。

ただそれだけではEQのパロディになってしまうので(巻末の解説によると、“パトリック・クェンティン”というペンネームも2人以上の合作だそうで(ペンネームというよりハウスネームかな)、こんなところもEQみたい)、序文に先ほどの断りを連ねた上であとは全部彼女からフィアンセへの手紙のみで構成、その中に推理する手がかりは全て含まれていますよ、という。

この“フィアンセへの手紙”というのが成功していて、それほどに心を許しあう仲なら結構他人には言えないことでもズバっと言ったり書いたりしますよね、そういうユーモアが、フィアンセへの揺るぎない愛情と相まって、主人公の彼女と一緒にドキドキハラハラできる作品に仕上がっていると思います。

最初は、書簡形式のミステリだとミスリードというか叙述トリックもアリかな、と書き手の彼女自身を疑ってみたりもしたんですが、序文でこの手紙を火にくべて破棄しようとした彼女が「悲しみの気持ちから」だったということと、結局彼女は無事に航海を終えてフィアンセと結婚したらしいことが明記されていたので、彼女メアリ・ルエリンは容疑者から外しました。

そうすると、彼女のまわりをウロウロしている人たちが容疑者になる。

その一人一人がまたみんな怪しいので、その意味ではサスペンスフルです。
手紙は最初、静養の為に船旅に出たメアリ・ルエリンがフィアンセのデヴィッドに宛てて書いていたごくごくプライベートなものでしかなかったのに、ジャーナリストとしての彼女が書きつけた内容が事細かに綴られていたために、事件を追う探偵役にも関係者の多くにも興味津々の、そして犯人にとっても脅威の文書になっていく過程が上手いなあと。

もちろん、書き手で視点人物であるミス・ルエリンが見間違いをしていたり犯人のミスリードに引っかかって、真相とは違う方向に向かいそうになったりと、しっかり小説としての面白さも盛り込んであるので(ご都合主義にはならない)読者も一緒に混乱することができます。

また、ミス・ルエリンが探偵役なのかと思いきや、彼女について離れない紳士が謎を解くのか(彼も容疑者の1人であることも確か)それともこの紳士はルエリンに害をなすために傍にいるのか。
と思ったら、実は探偵役は……!というキャラクタの配置の妙。
これ、結構ギリギリだと思うんですが(人によってはアンフェアであるかもしれない)、まあ、真の探偵役も、その推理の多くをミス・ルエリンの日誌(手紙)に頼っているという点では、完全無欠の名探偵とはいえないかもしれない。

消えた容疑者、動機十分の疑わしい人物、大海原を航海中の閉ざされた船の中、本格ミステリのお約束がぎっしり詰まっていて、するするさくさく進みます。
ただし、カードゲーム(コントラクト・ブリッジ)が出てくるので、そこらへんは知ってれば楽しいだろうし、私のようにちんぷんかんぷんだと読みとばしてしまっても犯人当てにそれほど影響はないと思いますが、まあ後半のブリッジのシーンで数人が容疑者から外れるので重要ポイントではありますね。

ただ、解決シーンになると、残念なことにかなり平凡。
これだけ引っ張って、謎も魅力的だというのに、ほとんどサプライズがない。
動機もアリバイトリックも現在ではありきたりだし(出版当時の1933年には目新しかったのかも)、真犯人がほとんど捻られていないんですよね。
容疑者たちがみんなそれぞれ怪しさ爆発気味だったのに、もったいないなあ。
だから、この感想文を書くかどうしようか悩んだんですが、本格ミステリ好きが愛してやまないパズラーとしてなら十分面白く読めると思ったので。

英米の古典ミステリとしての価値はあると思うし、ありとあらゆるトリックやアリバイ崩しの出尽くしたといわれる現在とは違って、1930年代の黄金期のミステリに数えてもいいくらいのパズラーではあると思います。

それにしても、こうしてみるといかにエラリー・クイーンが大きな存在だったかが改めて実感できますね。
ポーから始まる探偵小説が、ドイルで花開き、クリスティやセイヤーズやカーという後々まで影響を与える推理小説家が登場するなかで、クイーンというのはミステリという同じ宇宙の中の、クリスティとは別の巨大な銀河のような気がします。
(ポーの子孫ではあるけれども、クリスティやセイヤーズやカーの派生ではない、全く別の進化を遂げたミステリ種)
その銀河団には、クイーンの影響を受けた作家がこれまた銀河を形成するのですが、クイーンがいなければ存在しえなかったかもっと小さな銀河だったか。

すいません、叫んでいいですか。

エラリー・クイーン、大好きだーー!!

(1933年発表 2000.8 新樹社)
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