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『ブラックペアン1988』 海堂 尊 著

2008/09/03(水) 10:39:12 海堂 尊 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
バチスタシリーズの番外編二作目です。
これも、殺人事件なんて起きないし勿論犯人もアリバイトリックもありませんので、厳密に言えばネタバレではありませんが、未読の方で先入観を持ちたくない方は、これより先にはお進みにならないようにお願いします。



シリーズ本線では脇を固める重要人物である高階病院長と藤原元総婦長の若かりし頃、のお話です。
と言っても、この作品の主人公は研修医・世良雅志クン。
学生時代はサッカーで鍛えたバリバリの体育会系です。
時は1988年のバブル絶頂期 (…余談ですが、なんで今年はバブル期の物語が重なるのでしょうか?『女王国の城』(東京創元社)の向こうをはって講談社が対抗しているとしか思えない(笑)) 東城大学医学部付属病院、一年後には新病院が完成し、それに合わせて病院長選挙が執り行われる過渡期。

総合外科学教室佐伯外科に配属された世良は早々に、急遽巡ってきた手術チームの<手洗い>として手術室に入るチャンスを与えられる。まだ国家試験の合否も分からない宙ぶらりんの存在でも、今までの勉強の成果をフルに活かしてやろうと意気込むが、初めての現場は甘くはない。病院に君臨するカリスマ佐伯教授にボロクソに言われながら、それでもなんとか役目を終え一息ついた世良が出会ったのは、東京の帝華大学第一外科教室より招聘された“跳ねっかえり”、実は“阿修羅”と呼ばれた高階講師だった。
高階医師は、アメリカ・マサチューセッツ医科大留学時、<スナイプAZ1988>なる秘密兵器を開発しており、それを使って日本の外科手術を変えてやろうという野望を持っていた。
実際、噂に違わず高階講師の腕は天下一品で、その<スナイプ> (東城大学の面々にはオモチャとしか呼ばれないが) で次々と実績をあげていく。
ところで、佐伯外科にはもう一人、“手術室の悪魔”と呼ばれる渡海医師がいた。
手術チームの手順をすっぽりと無視し、けれど手術の技術はこれも天才。
正反対の性質を持ちながら技量はピカイチの高階と渡海は、どちらも何か訳ありで……?

まあ、全体としては、世良クンの成長物語であるには違いないですが、このお話は今では当たり前になっている<告知>、それも癌告知のタブーを打破しようという時代なんです。昔は患者の家族には癌であることを告げても本人には嘘をつき通した。それが当たり前だったし許されていた。
この物語の中に、二人の癌患者が出てきます。それぞれに高階医師、渡海医師がタブーを破って告知をします。それぞれの言葉とやり方で。その時の患者の対応が面白い。一人は気持ちを推し量って希望をもたせる方法、もう一人は淡々と事実と確率を読み上げ患者の希望をくじき、その上で決断させる方法。どちらの患者もこの二人を信頼して手術に臨むのです。

また、手術室で患者を死なせてしまうかも知れない程のミスをした世良クン。蒼白になって震え、布団から出られないくらいのショックを受けて病院を辞める決意をするのですが、彼を立ち直らせる為の高階医師と渡海医師の言動も正反対。世良クンは二人から掬い上げられて現場に帰りますが、そこで待っていたのは
「新米医師なんて辞めてもなんら現場には影響が無い」
という現実と、
死なせてしまいそうになった患者からの、言葉でした。
…もう、このくだりは、思わずもらい泣き。我ながら単純です。

渡海医師にはある謀略があった。
妙にウマがあった世良クンは彼の過去を聞かされる。

でも実は、佐伯教授のほうが一枚も二枚も上手だった。
ラストの展開は、はっきり言って渡海医師が過去を話し出したあたりで読めました。本当にそのままだったので拍子抜けしたほど。<ブラックペアン>に隠された意図はなるほどと思いましたが、謎でもなんでもなくテレビドラマでもよくある展開です。

このシリーズの読みどころは、やはり現役医師の海堂氏が書くだけある生々しいくらいの手術シーンや医局のやりとり、大学病院という閉鎖性と策略です。
それを愉しむという意味で、エンタメ小説と言っていいと思います。

このお話には、シリーズキャラがわんさか出てきます。学生時代の田口・島津・速水の同期三人組。猫田・花房などの後の看護師長の新人や主任時代。出てこないのはロジカル・モンスター白鳥サンくらいのものです。シリーズ本線で立ちすぎる程のキャラクタ設定にしておくと、いくらでもスピンオフが書けるんだねえ、と苦笑い。

さて、次は…?

(2007.11.22)
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