こんな本読みました。

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『わたしとトムおじさん』 小路幸也  著

2009/01/24(土) 22:15:19 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 読了♪♪♪
 引き続き開催中の“小路さん祭”、今年の第一弾作品ですね。
 これはまた、特別に読後感のいい作品でしたーwww
 とにかく日頃から殺人事件の話ばっかり読んでて自分でもさすがに気分が荒んでるなあと思うとき、小路さんの小説には本当に救われます。
 もっともっと多くの人に、小路さんの作品を読んでほしい。そして人間にとって人生にとって本当に大事なものは何か、子どもとか大人とか関係なくただ光り輝く自分だけの宝物を見つけるのに、とてもいい道標になると思います。





自分で決めて自主休校という選択をした帰国子女の帆奈ちゃんと、高校時代に訳あって引きこもりになった、でも装飾建築からちょっとした小物までを修復したり作ったりできる天賦の才に恵まれたトムおじさん。
この2人を軸にして、まわりにあたたかくて優しい人たちが集まってくるという、冬のストーブみたいな物語。

これを読んでいる間中、ずっと何かに雰囲気が似てる似てると思ってて、読み終えてやっと気付いた。
あの、金子みすゞさんの詩の世界と共通するところがあるなあ、って。
<大漁>の、“浜は祭りのようだけど 海のなかでは何万の いわしのとむらいするだろう”という部分とか。
“みんなちがって、みんないい”であまりにも有名な<私と小鳥と鈴と>とか。

帆奈ちゃんはアメリカでの経験から、もっと強い記憶と言葉でそう思っていて、みすゞさんのどこか影のある詩とは距離感もあるけれども、でもトムおじさんのこととか不条理なイジメのこと、そして何より両親のことを、みすゞさんとは違う角度から、それでいて同じことを感じているような。
それは多分、世界の真理や人間の存在を、宗教と科学と両方の視点で見るようなものではないのかな。どちらも正しいし、片方だけでは捉えきれないもの。

自分は多分、世間からするとわりと普通の人間で、普通に生きていける。
そんな慢心な自分のまわりに、例えば引き籠りとか脅迫症で上手く生きられない人がいたとしたら、ダメだと分かっていてもつい比較して自分を優位に思わないだろうか。
昔、私が通っていた小学校の同じ校舎にあった特殊学級の、当時の友達を、私はどこかそういう思いで見ていなかっただろうか。

何が標準で何が普通なのかは個人個人によって違うもの。
その多様性が限りなく重なり合って、この世界は出来ている。

そこに思い至るまでに、私は一体どれほどの友達を傷付けてきたのだろう。

人はそれぞれ、自分の為に生きている。
それは本当。
でも、他人の為に生きることもできる。
大好きな友達の、心に寄りそって感じて見ることもできる。
トムおじさんには、そのあたたかい光(spirits)を、古い舟やお茶碗にまで感じることのできる、鋭敏すぎる感覚を持って生きている。
それを、拙いながらも理解できる聡明さを兼ね備えた帆奈ちゃんが支える。

そんな2人のまわりに、ギスギスした人間は近寄れないって、怖くて(笑)
自分の中の空洞を、見せつけられるだけやもん。
だからこそ成立する、<明治たてもの村>。
いわゆる愉快犯のような、掻き乱すことに歪んだ喜びを見出すような外道には、眩し過ぎて近付けない。

一番好きなのは、実は恭介くんだったりします。
恨むという感情ももちろん持っていて、その上で憎む相手を間違えないで、好きな人には微笑みかける心とか好きなことをやり続ける強さもある。心が折れてない。
恭介くんの強さは先天的なもので、帆奈ちゃんは幼い頃の環境が作り上げた強さだと思う。
なので帆奈ちゃんの強さとはちょっと違うけど、でも分かりあえる同種の男の子じゃないかな。

そうそう、恭介くんといえば、施設のママさんの言葉、帯の背の部分に書いてあることばが素晴らしい!
“子供の仕事は明るくなること。大人の仕事は優しくなること”
そしたらこの世界は、笑顔で溢れかえることになる。
笑顔に満ち満ちた世界には、幸せなことしかないよって。
これも、みすゞさんの詩にあったなあ。

“もしも泪がこぼれるように、こんな笑いがこぼれたら、
どんなに、どんなに、きれいでしょう”<わらい>より

こんな読み方で正解ですか?小路さんw
あたたかい、素敵な物語を、また一つ届けてくださって、ありがとうございます。

蛇足。
<明治たてもの村>の「松濤館」とか、岩手の「深山荘」とかって、探偵長こと安井さんだったら、簡単にささっと図面書きながら読まれたりして♪とか、そんなことを思って笑っていました。すいません。せやかて隠し部屋とかさー、ドイツの建築とかさー、お好きじゃないかなと思ったんやもん★

(2009年 朝日新聞出版)
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