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『たまさか人形堂物語』 津原泰水 著

2009/01/23(金) 02:20:24 津原泰水 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 実はノーチェックだった作品。興味をもったのは、大阪にあるブックカフェ<珈琲舎 書肆アラビク>さんのブログから。
 元々、お人形というものに全くご縁のない私なので、いくらあの名作『ルピナス探偵団の当惑』を書かれた津原さんであろうと、当たりかハズレかは五分五分でしたが。
 結論。大正解!買ってよかった!
 なので、お人形というものにこだわりを持つかたなら、大変楽しい1冊ではなかろうかと思います。
 ミステリというジャンルでくくるには乱暴だし、幻想的ですがしっかり現実を見据えているのでファンタジーでもなく。




突然会社をリストラされたOLの澪さん、古今東西問わず人形の知識がマニア並みで手先の器用な資産家のご子息・富永くん、過去の一切が謎に包まれた腕は一級の人形職人である師村さん。
お祖母ちゃんっ子であり、その亡くなった祖母が遺した、そして病に倒れた祖父から贈与された、時流に合わない人形屋。澪さんは人形修復に道を見出し、求人広告に応募してきた富永くんと師村さんを雇い入れて、人生の再スタートを切る。
そして次々に店に持ち込まれる修復を願う持ち主と人形たち。テディベアからお雛様、何故か人目を憚るものまで…。
それらを愛情を込めて修復していく富永くんと師村さん、彼らとのやりとりを通して人形にはド素人の澪さんも、人形に、ひいては人間にまつわる謎と向き合う毎日。

持ち込まれるお人形によって当然ドラマが変わるので、連作短編集になるのでしょうが、最初から最後まで根底に流れている大きな謎は、“師村さんの過去”ということになりますね。
でも決して怪しい人物じゃないし、澪さん、富永くん、師村さんのチームワークは抜群で、会話もとても楽しいものです。
特に澪さんと富永くんのポンポン交わされる会話はめっちゃコミカルなので、思わず笑ってしまうほどなんですが、これが結構シビア。

<毀す理由>
<恋は恋>
<村上迷想>
<最終公演>
<ガブ>
<スリーピング・ビューティー>

うち、<村上迷想>は、事件が絡むのでミステリ仕立てになっていますが、その真相は犯人に突きつけられるのではなく、おそらくこういうことだろうという想像で締めくくられています。なのではっきりミステリだーとは言えない気がしますが、でも展開はやっぱりミステリだと思っていいでしょう。

まあ、修復してほしいと持ち込まれるお人形にまつわる疑問の数々は、一種の日常の謎系と言えなくもないし、でもそれよりも際立つのが、お人形というものをどう捉えているかという人間の心理ですね。
傍から見たらどれだけ安物でも、買った方がいいくらいのボロボロでも、またいわくありげな壊され方をしていても、きっとその人なりの理由とか思い入れがあるし、それを無視して修復することにどれほどの意味が持てるのか。

常に上から目線で辛辣なことをずけずけ言う富永くんも、過去の一切をひた隠し、ただ静かに人形と向き合う毎日の師村さんも、人形に関する知識とそれ以上の愛情や誠実さ、そして人形堂という店への愛着が隅々にまで現れていて、読んでいて気持ちいいのです。
それとは逆に、持ち主が隠したいもの、守りたいもの、それを象徴するのもまた人形なので、やはり主役はお人形ではなく人間の方ですね。

それほど分厚くもないこの1冊に、これでもかと人間と人形が詰まっていて、果たして操られているのは人形ではなく人間の方じゃないかと幻惑感に襲われるような、それでいてコミカルなやりとりとか愉快な人間性とか笑い処もちゃんと織り交ぜてあって、全く退屈しません。すいすいと読みやすいのに、シビアな目線とドライな関係で、さっぱりしています。

そして最後、おおこういうことかー!と膝を打った。
師村さんの過去からこういう展開になって、そしたら最後はココに繋がるのかー!という、スリーピング・ビューティー。青い眼と黒い眼。いやーお見事!!

澪さんの妄想っぷりも愉快だし、出てくる一見イケズな人も実はそれなりにイイ人だったり、お人形はまるで私の目の前に突き出されているようだし、読み応えのある作品でした。

えーと、私自身は子どもの頃、リカちゃん人形もバービーちゃんも何一つ買っては貰えなかったので、そしたらそのうち情緒そのものが欠落していることに気が付いてそれ以来お人形を実際に手元に欲しいと思ったこともない人生なんですよね。
見ていて可愛いとは思いますよもちろん。
でも、その可愛いお人形をどう扱ったらいいのか見当もつかない。
また、人形浄瑠璃を観に行くような趣味もないので、実はこの作品は私には身に合わない作品ではあるんです。

でもそれでも楽しかった。じわじわと効いてくる面白さがあって、誰にでもオススメできる1冊です。
ぜひ1度、読んでみてくださいww

(2009年 文藝春秋)
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